憲法の特殊性
特殊なポイント

憲法は行政書士試験科目の法令中でもかなり特殊で、ともすると学習の開始直後に出鼻をくじかれてしまう恐れもあります。特殊なポイントはおよそ以下の部分になるでしょう。

 (1) 条文に主語が無いなど、日本語的に分かりにくい。
 (2) 判例の積み重ねで法理が構築されている。
 (3) 合憲性(違憲性)判定基準に関連して、判断基準のワードがが色々ある。

これらうち、(1)については憲法が「対国家規範(=国家権力を縛るルール)」であるという位置づけを踏まえると、憲法が規制するのは基本的に国家権力の行為なのだと分かります。

また、(2)についても「裏技」では判例は規範を示すことで条文(要件)を分かりやすい言葉に言い換えていると説明したため、憲法は条文が短くて少ない分、判例による公式の補完が多く必要なのだと分かります。憲法は60年変わっていませんから、時代の変化に合わせて解釈により規範(公式)を変えていく必要もあります。

問題は(3)です。これはやや曲者です。


行政書士になれないのは職業選択の自由の侵害!?

憲法が認めたすべての人権を我々国民は享受できるはずです。

しかし例えば、皆さんが行政書士になりたいと思っても、試験を突破し登録を済ませなければ行政書士にはなれません。

これは職業選択の自由の侵害です。侵害ではあるのですが、他者の権利保護のためやむを得ないとされています。

能力のない者が行政書士になってしまうと他の国民の憲法上の自由や権利が損なわれる恐れがあるため、試験を突破して能力を示し登録して行政書士会の管理下にある者のみが行政書士業務を行えるようになっています。

このように、憲法上の権利が別の憲法上の権利と衝突・矛盾関係にある場合には、上手にバランスを取ってやる必要があるのです。そのバランス調整の判断のことを「合憲性(違憲性)判定基準」と呼んでいます。


キーワードは「公共の福祉」

バランスを取るといっても憲法上の権利を制約するのですから、憲法上の根拠が必要です。
その根拠となるのが「公共の福祉」で、12条、13条、22条、29条と憲法に4回登場する言葉です。

条文を見てもらうと分かりますが、「公共の福祉」は元より人権の制約根拠であることが明らかです。
もっとも、その内容は不明確ですので、例によって裁判所の規範で公式を補完してもらうことになります。

と、ここまではいいのですが、「公共の福祉」について事件ごとに裁判所が違った言い回しをしてるために話がややこしくなっています。「二重の基準」「積極消極二分論」「明白かつ現在の基準」「明白性の原則」「利益衡量」等々。

色々なワードが飛び交っていますので、整理できるようにしましょう。


人権の価値には軽重がある!
精神的自由の優越

人権のうち精神的自由に関するものは価値が高いとされています。思想良心の自由(19条)や表現の自由(21条)などがその代表格です。精神的自由権は侵害されると思想強制のような状態となり、民主主義が成り立たなくなるからです。

精神的自由と対になり精神的自由より価値が低いのが、経済的自由です。居住・移転・職業選択の自由(22条)や財産権(29条)などがこれにあたります。経済的自由は社会活動の一要素なので元より一定の制約が想定されているものです(「公共の福祉」は22条、29条にも登場)。

これらから、精神的自由の制約は原則憲法違反(違憲の推定)、経済的自由の制約はよほどおかしなものでなければ許される(合憲の推定)という大きく2つの分類ができるわけです。

この分類は「二重の基準」論と呼ばれています。


憲法違反かどうかの判断基準は4パターン

二重の基準論により、制約される権利の性質が精神的自由なら厳しく、経済的自由なら緩やかに判断されるのですが、もう1ステップ検討が入ります。

精神的自由の制約においては、制約されるのが「内容そのもの」の場合、「時・場所・方法」だけの場合より厳しく判断されなければなりません。

経済的自由の制約においては、権利制約の目的が「国民一般の保護(消極規制)」の場合、「特定の社会的弱者の保護(積極規制)」にある場合より厳しく判断されなければなりません(「積極消極二分論」と呼ばれています)。

結局、下のような4パターンの判断基準があるということになります。


上記4パターンの判断基準は判例によって色々な名前で呼ばれています。「裏技」的には4つのどれにあたるのか分かるようにして下さい。有名判例については知識として問われることもあるので注意が必要です。


「利益衡量」はガチンコのバランス調整

憲法問題でも、暴露本の「表現の自由vsプライバシー」のような事件もあります。この場合、優劣は付けられないので文字通りバランス調整で判断しなければなりません。

利益衡量は個別具体的検討なので、基準にあてはめるようなことはしません。重要判例も少ないのでテキストの内容を例として押さえておけば十分でしょう。


ところで・・・

行政書士業務を行うのに試験合格と登録が必要であるという問題は、どのパターンの基準で判断されるでしょうか?

今回の話のおさらいを兼ねて考えてみてください。



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