裏技の具体例
給水拒否事件

水道事業者である市が給水契約の申込を拒否したという有名な事件を例に、裏技での解決手順を説明します。

まず、この事件で適用が問題となる条文は水道法15条1項です。

 水道法第15条1項  水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならない。

水道法15条1項の公式は、水道事業者が給水契約申込を拒む場合「正当の理由」がなければ違法、ということになります。


結論の異なる有名判例が2つ

実はこの給水拒否事件では2つの有名な判例があって、それぞれ結論が異なっています。判例を結論だけで見る一般の学習者はとたんに混乱してしまうのです。

 最判平成元年11月8日(武蔵野市給水拒否事件)では給水拒否は違法

 最判平成11年1月21日(福岡県志免町給水拒否事件判決)では給水拒否は適法

しかし、ここまでの説明を読んでくれている皆さんには、結論が違っても「そりゃそういうこともあるでしょ」と感じてもらえているはずです。

そうです。事案の事実が違えば公式にあてはめた結果、結論が異なることは当然ありえるわけです。


「正当の理由」は判例が規範化

分かりにくい要件である「正当の理由」は例によって判例が分かりやすい言葉に言い換え(規範化)してくれています。

最判平成元年11月8日(武蔵野市給水拒否事件)
 水道法15条1項にいう正当の理由とは、水道事業者の正常な企業努力にもかかわらず給水契約の締結を拒まざるを得ない理由をいう。

 ※最判平成11年1月21日(福岡県志免町給水拒否事件判決)も同じ規範を用いています。

さて、水道法15条1項の公式が完成しました。
水道事業者が給水契約申込を拒む場合「水道事業者の正常な企業努力にもかかわらず給水契約の締結を拒まざるを得ない理由(=正当の理由)」がなければ違法、です。


公式を応用し、結論をだす
応用は事件の事案を公式に当てはめること

これまで公式の話ばかりで応用の仕方を説明していませんでした。

応用は事件の事案を公式(要件・規範)に当てはめて効果の成否を判断するというプロセスです。

試験問題では事件の事案は問題文として与えられます。


給水拒否事件の当てはめ

「正当の理由」があるかどうか、すなわち「水道事業者の正常な企業努力にもかかわらず給水契約の締結を拒まざるを得ない理由」があるかどうかにつき、裁判所はそれぞれの事件の背景となった事実を検討しています。

 最判平成元年11月8日(武蔵野市給水拒否事件)で問題になった事実
  →「行政指導(=法的拘束力なし)に従わないこと

 最判平成11年1月21日(福岡県志免町給水拒否事件)で問題になった事実
  →「慢性的な水不足地域での水道需要抑制のため、大口の新規需要者に我慢してもらうこと

皆さんそれぞれの事実は「水道事業者の正常な企業努力にもかかわらず給水契約の締結を拒まざるを得ない理由」だと思いますか?


応用の判断は一般人の感覚でOK

裁判所は、武蔵野市の事件では「正当の理由なし」、福岡県志免町の事件では「正当の理由あり」、と判断しました。それゆえ、それぞれの事件の結論は上述の通りになったわけです。

おそらく裁判所の判断は皆さんの判断と同じだったのではないかと思います。

裁判官は、一般国民の信頼を勝ち取るべく、一般人が納得できる判断をすることが求められます。
ですから、皆さんが公式を応用する場合の判断も一般的常識的な判断でいいんです。

試験では、有名判例のどちらでもない事案について問われますが、公式の判断基準が分かっていれば応用して違法か適法か判断できます!



公式の導き方  <<  >>  最新判例の読み方